
レッドオーシャンで勝ち抜くためのポジショニング戦略 〜「あなたしかいない」領域の見つけ方〜

はじめに:なぜ、努力すればするほど埋もれていくのか?

前回の講義で、あなたはチャンネルという名の「国」を創るための、壮大な決意を固めました。
「誰に」「何を」約束し、「なぜ、自分でなければならないのか」。この建国の理念(チャンネル・ブランド)こそが、すべての戦略の出発点です。
しかし、あなたの国の周りには、すでに何万もの国(競合チャンネル)が存在します。特に、あなたが参入しようとしているのが人気ジャンルであれば、そこは血で血を洗う「レッドオーシャン(赤い海)」です。
ここで多くの新興国が犯す過ち。それは、すでに成功している大国(トップチャンネル)を真正面から模倣することです。
「あの国がやっているから、うちも同じことをやろう」
「あの国の動画が伸びているから、うちも似たような企画をやろう」
これは、最も確実に失敗する道です。体力も資源も劣る新興国が、大国と同じ土俵で戦いを挑んでも、待っているのは消耗と消滅だけです。彼らの圧倒的なブランド力と物量の前に、あなたの存在は誰にも気づかれることなく、海の藻屑と消えていくでしょう。
今回の講義の目的は、この無謀な戦いを避け、体力のない新興国でも確実に勝利を収めるための戦略、「ポジショニング」を学ぶことです。それは、誰もいない豊かな海域「ブルーオーシャン(青い海)」を発見し、そこで「あなたしかいない」という、絶対的な地位を築き上げるための、知的な航海術です。
ポジショニングとは「戦わずして勝つ」ための知恵である

ポジショニング戦略とは、一言で言えば「自分だけの土俵(ニッチ市場)を作り出す」ことです。
視聴者の頭の中に、「〇〇といえば、あのチャンネルだよね」という、特定のキーワードとあなたのチャンネルを、強力に結びつける行為。それがポジショニングです。
例えば、「分かりやすい解説」という土俵には、「中田敦彦のYouTube大学」という、誰もが認める横綱がいます。この土俵で彼に勝負を挑むのは、無謀です。
しかし、「"40代のビジネスマン"にとって、"明日から使える雑学"を、"10分"で分かりやすく解説する」という、より狭く、より具体的な土俵であればどうでしょう?
そこには、まだ横綱はいないかもしれません。その小さな土俵であなたが一番になれば、あなたは、その領域における「No.1」になれるのです。
YouTubeで成功するために、ジャンル全体のNo.1になる必要はありません。
視聴者の頭の中の、ある特定の小さなカテゴリーでNo.1になること。それこそが、私たちが目指すべきゴールです。
「No.1」のポジションを見つけ出すための2軸マッピング思考

では、どうすればその「自分だけの土俵」を見つけられるのでしょうか。
そのための最も強力な思考ツールが「2軸マッピング」です。これは、市場に存在する競合チャンネルを、2つの異なる評価軸で座標上にプロットし、市場の全体像と「空いている場所(ポジション)」を視覚的に発見するためのフレームワークです。
ステップ1:市場を定義する「2つの評価軸」を決める
まず、あなたの参入するジャンルの視聴者が、チャンネルを選ぶ際に無意識に重視しているであろう「判断基準」を2つ、選び出します。この軸の選び方こそが、戦略家の腕の見せ所です。
- ありがちな軸の例:
- ガジェット系:「情報量が多い⇔少ない」「初心者向け⇔上級者向け」
- 料理系:「手軽さ⇔本格的」「節約志向⇔ご馳走志向」
- フィットネス系:「ハードな運動⇔簡単な運動」「短時間⇔長時間」
- エンタメ系:「企画の奇抜さ⇔日常感」「個人チャンネル⇔グループチャンネル」
ステップ2:競合チャンネルを地図上にプロットする
次に、あなたがベンチマークしている競合チャンネル(【初級編 第4回】参照)が、その地図のどこに位置するかを、一つずつ配置(プロット)していきます。
例えば、フィットネス系チャンネルで考えてみましょう。
縦軸を「運動のハードさ」、横軸を「動画の時間の長さ」とします。
- チャンネルA:毎日30分、軍隊のような超ハードなトレーニング → 右上の領域
- チャンネルB:寝る前に5分でできる、簡単なストレッチ → 左下の領域
- チャンネルC:週末に60分かけてじっくり行う、中級者向けヨガ → 右の中央領域
このように競合をプロットしていくと、どの領域にチャンネルが集中しており(=レッドオーシャン)、どの領域が手薄になっているのか(=ブルーオーシャンの可能性)が、一目で分かるようになります。
ステップ3:「空いている場所(空白地帯)」に、自らの旗を立てる
地図を眺め、競合が密集していない「空白地帯」を見つけ出します。
先のフィットネス系の例で言えば、「短時間(左側)で、かつハード(上側)なトレーニング」を専門とするチャンネルは、まだ少ないかもしれません。
「忙しいビジネスマン向けの、朝5分で目が覚める鬼のHIITトレーニング専門チャンネル」
これが、あなたが見つけ出した「No.1になれる土俵」です。
このポジションを一度決めたら、あなたのチャンネルのすべての活動(企画、サムネイル、タイトル、話し方)を、このポジションに最適化させていきます。
- サムネイルは、常にスーツ姿の男性が汗を流しているデザインにする。
- タイトルには、必ず「5分」「鬼の」「HIIT」というキーワードを入れる。
- 動画のテンションは、常にエネルギッシュで、視聴者を鼓舞するものにする。
この一貫性こそが、視聴者の頭の中に「朝の5分トレといえば、あのチャンネルだ」という強力な刷り込み(ブランディング)を完成させるのです。
まとめ:あなたはもう「国の外交戦略家」である

建国者であるあなたは今日、自らの国を、世界地図のどこに位置づけるかを決定する「外交戦略家」としての視点を手に入れました。
無謀にも大国に戦いを挑み、歴史から消えていく道を選びますか?
それとも、誰も気づかなかった豊かな土地(ブルーオーシャン)を見つけ出し、そこで独自の文化を築き、国民から愛される、小さくとも偉大な国の王となりますか?
答えは、言うまでもありません。
ポジショニングとは、単なるマーケティングテクニックではありません。
それは、自らの「強み」を最大限に活かし、他者との無意味な比較から自らを解放し、自分らしく輝くための、最も知的で、最も平和的な生存戦略なのです。
次回の講義では、こうして確立したあなたの国に、熱狂的な「国民(ファン)」を惹きつけ、彼らとの間に決して揺らぐことのない深い絆を築くための技術、「再生数からファン数へ 〜視聴者を熱狂的なコミュニティに変えるエンゲージメント戦略〜」について解説します。
編集後記
ちょっと今回は落とし穴もあるんですが、ブルーオーシャンの話が出てきましたね。
そしてそれを探すための2軸マッピング。ここで面白いのは今回はパクっちゃいけないというところでしょうか。この辺りは少し混乱する人もいるんじゃないでしょうか。
パクるって言い方なんですが、通常はやらないことですし、権利を持っていたりするのをパクると、大変な事になるのもご理解されていることでしょう。
【初級編 第4回】に出て来たパクるというのは、編集後記でTikTokの話を出したので理解が早い方も多いと思われるのですが、ようはフォーマットを一緒にした方が見られる確率が上がるという話だったんです。
今回の話に関しては、真っ向から同じ切り口で同じことをやろうとしちゃダメだという話ですね。
差別化があるのか無いのか、それをやったところとて同じ土俵で勝てる見込みはあるのか?という話になります。2軸マッピングは同じ切り口でも別の立ち位置に立つことが書かれています。
この辺は、飲食店などお店をやられてる方なら至極当然とお思いの方もいらっしゃるかもしれません、お店を構えるときにはリサーチもされるでしょうし、競合との差別化なども考えられることと思います。今回はそういったお話ですね。
「ちょっと待て!タイトルもサムネイルも前と言ってた話と違う事言ってるぞ!どうなってんだ!」という方もいらっしゃるかもしれません。ただ前回の話を思い出してください。
今回は、チャンネルブランドに舵を切った後の話です。そうです。そうなんです。
戦略が丸っきり変わってくるのが、この辺りの面白いところなんです。
ここまで読んでいただけたら、1人担当が全てを執り行うのが難しくなってくるのが理解いただけるのではないでしょうか。
私は、やっぱり制作部隊と分析部隊は別にした方が絶対効率的だと思っています。













